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ベトナム南部の旅 (横井弘海)

 南シナ海に沿って、南北3000キロを超える細長い国土をもつベトナム。北部、中部、南部で、気候や風土は大きく異なります。11月から4月の乾季は、南部でも暑さが多少ゆるみ、過ごしやすい季節を迎えます。 ベトナム南部の多彩な魅力を7回に分けて紹介いたします。

6.カントーの栄華に想いを馳せる

ラマンの撮影もここで行われた。

 カントーはフランス統治時代も、経済、文化の中心地でした。その時代に商売で成功を収めた方の邸宅が、カントー市郊外のビントゥイ郡に残っています。フランス領インドシナ(現ベトナム)生まれのフランスの作家マルグリット・デュラスの自伝的小説を原作にして1992年に製作された映画「愛人/ラマン」の撮影にも使われた家です。

 

 1870年に建設されたその家は、フランス人とベトナム人の建築家が一緒に設計したからか、家の内外ともフランス風とベトナム風が無理なく調和したデザインです。繊細な飾りが施された黄色のしっくいの外壁はフランスの小さな宮殿を彷彿とさせ、庭のピンクのブーゲンビリアの鉢植えはベトナムといった感じです。


カントーの邸宅正面

 「昔はさぞ優雅な暮らしだったのだろうな」と家を見上げて、想像を巡らせてしまいます。リビングには仏製の洗面台と床タイル、ベトナムの銘木を彫刻した天井まで届く巨大な祭壇がありました。

 70歳になる家主リエンさんは、かつては英語の教師をされていた、見るからに品の良いマダムでした。夫のご先祖から受け継いだものは、もうこの家しかないと言いつつ、「でもね。2つの戦争を経験して、まだこの家があるのは、とても運が良いと思います。年1回、先祖をしのんで、親戚50人が集まるのを楽しみにしています」と、おだやかに語りました。

 19世紀、20世紀は、リエンさんのご家族にとって激動の時代だったことでしょう。その歴史を見守りつづけた家には、ただ静かな時間が流れていました。

 


 

取材協力:ベトナム航空

横井弘海(プロフィール)

 慶應義塾大学法学部卒業。テレビ東京アナウンサーを経て、フリー。司会、インタビュー、講演、執筆活動を続ける。駐日大使のインタビュー番組と連載がきっかけとなり、海外観光取材を開始。訪問国は約70ヵ国。著書に朝日新聞社刊「大使夫人」。NPO法人ハートtoハート・ジャパン理事


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