キレイ・ライフスタイル(旅)

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スペインを旅して=2(大宮 冴理)

アンダルシア地方− セビリア(セビーリャ)①

セビリア・フラメンコ

 断崖絶壁の町ロンダの次に向かったのは、スペインで4番目に大きい都市で、紀元前から続く歴史の深い街、セビリア。

 ロンダからバスで2時間程度の移動を終え、トラムという路線バスで中心部に移る。トラムが走る市内は、道路が広く気持ちがいい。近代的なトラムが走るその脇には、世界で3番目に大きいという大聖堂「カテドラル」があり、馬車が並走している。

 歴史を感じさせる建物を眺めながらトラムに乗っていると、現在と過去が混在するような時間軸の歪みを感じ、不思議な気持ちに陥る。

 トラムから降りると、至るところから音楽が聞こえ、エキゾチックな空気が漂っている。


音楽を奏でる若者たち

 セビリアに来たのは、ここがフラメンコの聖地であるから。

フラメンコを観に、La casa del flamencoというタブラオに行った。タブラオとは、フラメンコ専用の小さなステージのあるライブハウスのようなものである。

 フラメンコは、かつてジプシーと呼ばれた集団が発展させた音楽芸能。虐げられた怒りや哀しみ、そういった環境だからこそ感じる溢れる喜びや恋への情熱を、この音楽に捧げたのかもしれない。

 事前知識に乏しい私でも、ほとばしる感情を表現するフラメンコに圧倒的な異国を感じ、心臓が大きく跳ね上がった。

カンタオール(男性歌手)の魂が叫んでいるような歌声の中、バイラオーラ(女性ダンサー)が険しい表情で情熱を表現する。歌と踊りの熱気の中に滲む、言いようのない切なさ。

 フラメンコを観ただけで、この民族の歴史をほんの少し肌で感じることができるような気がする。みなさんもぜひ一度、本場のフラメンコを堪能してみてください。

 


セビーリャの名物「セラニート」。ボリュームたっぷりのサンドウィッチ

 フラメンコ鑑賞の直後、日本語で「ありがとね」と何度も言う声がきこえてきた。不思議に思って見回すと、日本人らしき年配の女性がいる。つい声をかけてしまい、そこから一緒に夕食へと繰り出した。

 彼女の名前は、ユウコさん。早期退職をして、世界中を旅しているのだそうだ。一番好きな場所は南米。スペイン語も英語も話せないが、一人きりで世界中を回っているという。

 ひとしきり旅の会話で盛り上がった後、近所のおばちゃんの挨拶のような軽さで、「またどこかで」と言ってユウコさんは去っていった。

 言語が分からないとか、一人で大丈夫だろうかとか、スペインに来る前に私が密かに悩んでいた諸々は、急にくだらないことに思えた。

 たっぷりとした食事を全て平らげ、「なんでも、やらなきゃ損よ」とユウコさんは言った。

ユウコさんはまだどこかで旅をしているかもしれない。言葉が通じなくてもひるむことなく、日本語で「ここに行きたいのよ」とか「ありがとう」とか言いながら・・・


大宮 冴理(プロフィール)

エッセイスト
青山学院大学 心理学科卒
 
FMラジオのパーソナリティや、ラジオCM制作、子どもの発想力ワークショップ開催など様々な表現活動を経て、言葉本を販売。
編集のお仕事をしながら、現在執筆中。


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